小石川のマンション建築確認取消し巡る訴訟、事業主敗訴

関西では殆ど取り上げられていませんが、東京都文京区のマンション「ル・サンク小石川後楽園」における「建築確認取り消し裁決」を巡る訴訟の判決がありました(東京地裁5月24日)。

東京都建築審査会による「建築確認取り消し裁決」を不服として、事業主のNIPPOと神鋼不動産が提訴していた行政訴訟です。マンションは、傾斜地にある地上8階建て、地下2階延床面積約13,377㎡の大型マンションで完成目前でした。東京地裁の判決は、都建築審査会の裁決に誤りはなかったとして事業主側の請求は棄却されました。

都建築審査会の裁決以降マンション工事(竣工直前)は止まったままで、今回判決に至るまで既に2年半が経過しました。用地取得時からトラブル続きのなか、区の建物高さ規制が発効するまえに、あえて駆け込みでマンション着工に踏み切ったツケは大きかったようです。

このマンションプロジェクトの大まかな流れです。用地は、NIPPOと当時の神戸製鋼所不動産カンパニー(現神鋼不動産)が落札して取得したものです。

事件経過

マンションの地下駐車場が、地上と直接つながった「避難階」に当たるかが争点となっていた訳ですが、専門家で構成される建築審査会の裁決はやはり重たかったということです。

平成11年の改正建築基準法施行により、民間会社でも「建築確認」ができるようになった訳ですが、今回の判決に関して、建築確認処分を行った民間指定検査機関の立場は大変微妙と思われます。国交省の統計によると、建築確認申請は行政=特定行政庁(建築主事)への申請より、民間指定検査機関への申請が圧倒的に多いのです。中間検査や完了検査など含めた事務処理が早いのでしょう。ただ建築確認の取り消しがあれば、大きな社会的損失が生まれる可能性があるので、今後細かい部分での法令解釈に関し、民間会社も相当慎重な姿勢で臨むようになっていくと思います。

建築確認申請数

事業主側(主体は過半の持分をもつと思われるNIPPO)のとりうる大まかな選択肢は、

1.控訴する(結論先送り)
2.ほぼ完成したマンションを取り壊す
3.約2階相当分を減築する(現状27mある建物高さを、建物高さ制限22m以下にするため)

というようなことになります。ただ、控訴しても時間がかかるうえ、一審判決を覆すのは大変です。減築も現実的ではなく、結局、現在既存不適格物件(?)となった建物を撤去し、計画を修正後再建築ということになるのかもしれません。

関西で高低差のある傾斜地のマンションといえば、阪神間をイメージしますが、そういった斜面地でのマンション計画は、余裕のあるプランであるべきだと思います。プロジェクト利益=自社の利益極大化ばかりに目を向けていると、正常なバランス感覚をなくし、大きな損失を招く恐れがあることを肝に銘ずべきです。

(過去記事:神鋼子会社不動産株東京センチュリーなどに売却






カテゴリー: 不動産 | 小石川のマンション建築確認取消し巡る訴訟、事業主敗訴 はコメントを受け付けていません。

福島のライオン大阪ビル跡に「モクシー大阪新梅田」

個人消費が一向に上向かず、期待は好調が続くインバウンド=外国人観光客需要、という状況のなか積水ハウスはインバウンド向けホテル事業展開を加速しています。同社は米国ホテル大手マリオット・インターナショナルと組み「モクシー大阪新梅田」(客室数288室)を2020年に開業すると発表しました(5/16同社ニュースリリース)。

積水ハウスは、御堂筋沿いにも同じマリオットの日本初進出となる、最高級ホテル「W OSAKA」を2021年2月開業予定です。

(関連記事:<御堂筋沿い最高級ホテル「W大阪」は337室、積水ハウスなど

モクシーは、若い世代を主要ターゲットにする、スタイリッシュでリーズナブルな価格設定のマリオット新ブランドホテルで、新梅田は昨年の本町に続く大阪2カ所目の開業です。ホテルは、JR線福島駅の北、なにわ筋沿い北東角地で視認性抜群のライオン大阪ビル跡に新築されます。「うめきた2期」で2023年春予定の「(仮称)北梅田駅」が開業すれば、関西空港へのアクセスが大幅に改善され、インバウンド向けホテルには絶好の立地となるでしょう。

モクシー大阪地図

このライオン大阪ビルの少し北側には旧ホテルプラザ・朝日放送社屋跡があり、積水ハウス主体の超高層タワーマンションが計画されています。旧ホテルプラザの隣接地では「グランドメゾン新梅田タワー」が来年早々に竣工するので、積水ハウス本社も近いこの一帯は積水村という感じになってくるでしょう。

なお、済生会所有地約3,900㎡は医療施設ゾーンです。また、ライオン大阪オフィスは去年8月、本町南ガーデンシティに移転しています。

モクシー大阪周辺図

モクシーは、2017年秋東京錦糸町と大阪本町で日本初進出をしましたが、それら2か所はオフィスビルをホテルにコンバージョンしたものでした。恐らく、東京と大阪という国内2大インバウンド市場でのテストマーケティングの狙いもあったと思います。

今回のモクシー大阪新梅田は、プロジェクトマネジメントを担う積水ハウスが新たに開発するものです。土地と新築する14階建てホテル用建物を積水ハウスとファー・イースト・オーガニゼーションが所有し、ホテル運営受託会社として、マリオットがモクシー大阪新梅田を運営するという事業スキームです。

モクシー概要

ホテル外観パース。

外観バース

今回は、ユニークで遊び心があると言われる「モクシー」のコンセプトに沿って作られた建物での営業で、周辺に新たな賑わいをもたらしてくれるでしょう。このカジュアル感覚のホテルは、比較的若い世代がターゲットですが、美食の街福島とは相性がいいように思います。






カテゴリー: 再開発 | 福島のライオン大阪ビル跡に「モクシー大阪新梅田」 はコメントを受け付けていません。

近畿圏新築マンション、投資需要に陰り(4月度)

近畿圏の新築マンション市場動向4月度が発表されました(不動産経済研究所)。発売戸数は前年同月比25.2%増の1,742戸、初月契約率は71%でした。ただし発売戸数大幅増は、投資用1Kタイプ激増(前年同月277戸→592戸)が要因で、実需向けマンション供給数は前年同月比約4%の減となっています。

4月度の価格帯別発売戸数・契約率では、2500万円以下の投資用物件と8000万円以上の高額物件供給増が目につきます。注目は関西の新築マンション市場を席捲し、売れに売れていた「投資用物件」の初月契約率が、3月、4月と続落していることです。

(2500万円以下物件の初月契約率:2018年)
・1月:99.4%
・2月:98.4%
・3月:79.5%
・4月:73.6%

近畿圏4月の価格帯別での発売戸数と初月契約率です。
価格帯別グラフ

2017年年間通して初月契約率90.6%と驚異的な結果を残し、2018年に入っても1月、2月と絶好調だった投資用物件(2500万円以下)は、ここにきて市場の潮目が変わり市況急変ともとれる動きです。

不動産投資については、東京での詐欺的シェハウス投資事件などが大きく報道されています。金利先高観があり投資家のスタンスが慎重になりつつあることや、関西地銀、信用金庫の不動産融資姿勢にも変化が出てきているのかもしれません。今後は投資用の物件選別がより厳しくなると思います。

一方、実需向け物件(投資用=1K/1DK/1LDKを除く)の発売数・契約率推移は、好調だった前年同月比では初月契約率が悪化しているものの、近畿圏としては発売数・契約率ともにほぼ巡航速度の状況だと思います。

実需向けグラフ

また3月までは比較的上昇基調にあった、首都圏マンション市場も4月は暗転しており先行き不透明感が出てきています。
首都圏と近畿圏の初月契約率推移です。一進一退が続きます。

契約率推移

首都圏、近畿圏とも実際に当月契約できた物件数(投資用除く)も対前年同月比では増えていません。先月かなりの増加があった首都圏の契約戸数も、4月は前年同月比相当な落ち込みになってしまいました。東西とも先行き不透明感があります。

契約戸数

近畿圏2018年4月度の新築分譲マンション主要指標。1戸当り価格のダウンと1㎡当り単価上昇の原因は、4月度に2500万円以下の投資用物件が大幅供給増となったためです。4月度も投資用物件が全体の30%以上を占めるため、近畿圏新築マンション市場の指標は少し歪みがでます(ファミリー用と投資用では設備・仕様が異なります)。

・発売戸数   1,742戸(前年同月比25.2%増)
・契約率    71%(前年同月比7.2ポイントダウン)
・1戸当り価格  3,825万円(前年同月比0.2%ダウン)
・1㎡当り単価  67.5万円(前年同月比8.5%アップ)

昨年1年間、異常に売れた投資用や高額物件の供給が増えていますが、投資マインドに陰りがあれば、去年並みの契約は難しいかもしれません。

(追記)
日本不動産研究所から22日公表された第38回 不動産投資家調査(2018年4月現在)によると、「不動産投資家の今後1年間の投資に対する考えは、新規投資を積極的に行う、の回答が90%」と依然として投資マインドは旺盛のようです。しかし確実に投資対象の選別が厳しくなるように思います。

日本不動産研究所:第38回「不動産投資家調査」(2018年4月現在)の調査結果概要






カテゴリー: 住宅市場動向・統計 | 近畿圏新築マンション、投資需要に陰り(4月度) はコメントを受け付けていません。