中古住宅市場の取引動向に関する新指標公表

外出自粛で非常に閉塞感のあるゴーデンウィーク(?)になっています。金融バブルの崩壊だったリーマンショックと違い、ヒトとモノの動きが制限されるコロナ禍では、生活必需品を買う以外の消費が消えてしまいました。百貨店など小売り、飲食の4月売り上げ壊滅など、コロナによる消費大不況到来かという重苦しい状況です。

さて、国土交通省が中古住宅市場の取引動向について、新たに「既存住宅販売量指数」という指数(月単位)を発表しました。

中古住宅の取引件数は正確な把握が難しかったのですが、不動産売買で必ず行う「登記情報」の全数データを基に計算される今回の指標は、信頼性の高いものと言えます。3か月遅れという遅行性はあるものの有用な資料となるでしょう。

この新指標は2010年を100として、個人が取得した中古住宅取引(新築を除き、別荘セカンドハウス、投資用物件等含む)の件数を指数化したものです。なお、マンション販売量(取引数)に関しては、投資用として売買される中古ワンルームマンション(床面積30平方メートル未満)の取引件数を含めたものと除外したもの2種類が用意されています。

関東と近畿の中古住宅取引件数(一戸建て+マンション)の指数では、中古住宅市場が2012年位から順調に市場を拡大しているように見えます。ただしこれは超低金利下で急激に増えたワンルームマンション取引を含めたもので追い風参考記録でしょう。

既存住宅販売量全部

2019年の近畿の全中古マンション売買取引中、その2割をワンルームマンション取引が占めていました。やはり中古住宅市場の実態を見るには、仮需のワンルームマンション取引件数を除外したものの方が適切です。下図が新指標の既存住宅販売量指数(年次)近畿分2008年~2019年のグラフで、上図とはかなり印象が違います。

実際にはここ10年位、実需中古住宅市場規模はリーマンショックの頃をピークにやや縮小~横ばい傾向にあったことがわかります。

新築住宅の価格高騰による不振もあってようやく2019年から拡大傾向に入ったようです。新築市場が低迷するなか、中古売買が活発化していると思っていたのでやや意外です。

同じくワンルームマンション取引件数を除外した関東圏と近畿圏の指数グラフ。実需はともに昨年から取引量を増やしています。

既存住宅指標関東近畿

リーマンショック(2008年9月)の影響が長引いたものの(特に関東)徐々に立ち直り、折角本格的な中古時代が到来しそうになったのに今度はコロナショックという状況です。

◆戸建て・マンションの中古住宅市場は仲介大手の寡占化が進行?

上記「既存住宅販売量指数」でみると投資用(1R)を除くと、意外に中古住宅市場の規模は拡大していません。しかし、最近の仲介大手の業績は増収増益続きで大きく伸びています(5月1日にあった野村不動産ホールディングスの令和2年3月期の決算でも子会社野村不動産アーバンネットの業績が増収増益でした)。

どうやら全体のパイが大きくならない中古住宅仲介市場で、仲介大手の寡占が急速に進んでいるようです。大手寡占化の要因となっているのは社会全体のIT化の進行だと思います。

仲介業者の主な販促ツールが紙媒体から「Web」に移行するなか顧客の行動も変わり、豊富な情報量と洗練されたホームページ、圧倒的なWeb広告露出量で「Web+リアル店舗」型営業を展開する大手優位の流れになっているのでしょう。

このコロナ禍が落ち着いても、以前のような対面営業は減ることは確実です。価格の大きい不動産売買がすべてオンラインで完結するようになるとは思えませんが、少なくとも不動産営業スタイルに大きな変化はあるでしょう。






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近畿マンション市場、コロナ禍で投資用急落も実需堅調(3月)

近畿圏の3月マンション市場は新型コロナウィルス禍のなか、ファミリー向け4,000万円台9,000万台~2億円台の高価格帯が好調販売と、実需の底固さが目立ちました。発売数も前年同月に近いを戸数でした(発売数はワンルーム・コンパクト型除く)。

絶好調だったワンルームマンション投資需要がコロナ禍で急減し、代わって落ち込み続けていた実需ファミリー物件と高額帯物件が一転高契約率となるなど仮需崩落、実需堅調に様変わりした月次結果です。

価格帯別の前年同月比較が下図。
昨年3月は3,000~6,000万円台がよく売れたのに比べ今年3月は、1億円台の物件が発売数を大きく増やし高契約率を記録しているのが目につきます。2億円台(発売7戸)は全戸が発売月契約となっています。

(左軸発売戸数、右軸契約率)
価格帯別

億ションなど高額帯は立地などの選別が厳しく、物件次第で契約率が大きくブレるものの、一定の需要はあるようです。

ワンルームマンション投資については、コロナ禍でリーマン以上の大打撃をうける関西経済を考えれば今後更に大きく落ち込むのは確実です。梅田周辺の賃貸マンションは、飲食関係や小売り関係の入居者が多いので、相当な影響を受けるものと思います。

ファミリー型

関西の3月新築マンション市場は予想以上の好結果でしたが、コロナ禍で住友不動産や三井不動産はモデルルームで新規営業を停止している状況です。非常事態宣言下の4月以降は、本当に発売すらなくなる異常なマーケットとなるでしょう。



首都圏と近畿圏の(ワンルーム系コンパクト型を除外)の初月契約率推移。

コロナの問題で不安視された3月は共に70%近い初月契約率となりましたが、内容には大きな差があります。ほぼ前年並みの発売数だった近畿圏に比べ、首都圏発売数は1771戸と前年同月比約43%の大幅減となっているので、この契約率でも危機的な状況に変わりありません。

◆近畿圏2020年3月度の指標

不動産経済研究所発表のデータです。今月はワンルームなど投資用物件の発売数が減り、かつ久し振りに高額物件の発売数が増えた影響で、1戸当り価格や1㎡当り単価は大きく上昇しています。

・発売戸数   1,528戸(前年同月比5.5%増)
・契約率    69.2%(前年同月比11.4ポイントダウン)
・1戸当り価格  4,905万円(前年同月比11.4%アップ)
・1㎡当り単価  76.2万円(前年同月比13.7%アップ)

新型コロナで全く先の読めない状況下で、不動産購入は一旦遅らすほうがベターと思います。






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積水ハウス定期株主総会は前会長の反撃で波乱必至

積水ハウスの4月23日開催定時株主総会に、地面師詐欺事件をきっかけとした人事抗争で2年前に解任された同社和田勇前会長らが、取締役の総入れ替えを求める株主提案を出しています。

普通、株主提案の取締役候補が過半数の賛成を得るのは大変です。しかし、今回はクーデターで失脚した前会長がこの総会に狙いを定めて、メディア戦略含め周到に準備し根回しした経営陣刷新の提案なので予断を許しません。

しかも米議決権行使助言会社最大手インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスの2社が、それぞれ会社提案につき、阿部会長と稲垣副会長の取締役再任に反対を推奨(但し和田氏にも反対推奨)、現代表取締役4人(前記2名含む)全員について反対推奨とのレポートを出しています。

両社ともガバナンス重視の流れ、地面師詐欺事件に絡む情報開示姿勢などが反対推奨理由のようですが、その件で責任が重いとされる会長や副会長の再任にどの位の賛成あるいは反対があるのか注目の株主総会です。

2020年1月31日における積水ハウスの株主構成。
金融機関などの機関投資家や外国人投資家は、議決権行使助言会社のアドバイを参考に自らの判断で議決権を行使しますが、現体制に厳しい目を向けることにはなるでしょう。ただし、積水ハウスはこの規模の会社にしては外国人株主比率が低いようですが。

円グラフ

◆まだ謎多い積水ハウス地面師事件の全容解明は何時?

2年前の人事抗争の発端となった有名な東京五反田の「地面師詐欺事件」は、依然として謎が多く真相究明は進んでいません。会社側は社内の調査対策委員会による事件に関する「調査報告書」の公開を頑なに拒み、情報開示に異常なほど消極的な姿勢も目立ちます。

しかし大企業で起きた大型不正経済事件なので、もっと全容解明にむけ事件の詳細を率直に開示すべきだと思います。今の状態では積水ハウスの内向き志向の隠ぺい体質が際立ち、詐欺被害額の何倍もに相当するイメージダウンになっていると感じます。

事件の流れ。多額の不明金がアメリカからも注目され、マネーロンダリング疑惑などの話もでているようです。

取引図

詐取された55.5億円のうち中間業者の「IKUTA HOLDINGS(株)」が、この架空取引で10億円の差益を得、残り45.5億円は、地面師グループ内で分配などされたりしたのでしょうが、詳細は不明です。

取引内容

マンション購入代金7.5億円とは、積水ハウスの新築マンション「グランドメゾン江古田の杜」11室を偽売主に購入させる売買契約の代金相当分で、偽売主への残金決済分から相殺したものです。

「グランドメゾン江古田の杜」は当時販売状況が芳しくなく(竣工後2年以上経つ現在も販売中)東京マンション部としてどうしても売りたい物件だったのでしょう。しかしそんな営業?をする前に、何故大型土地取引にあたって最も大事な「売主の本人確認」に、(いろいろな警告があるにもかかわらず)最大限の努力をしなかったのか本当に不思議な会社です。

ここにきて、積水ハウス元不動産部長の方の「会長(当時の社長)は不正取引を知っていた」との実名証言が飛び出すなど、株主提案側が一段と攻勢を強めているようです。

新型コロナウィルス禍のもと、例年とは違う(参加者、時間)株主総会がどう決着するのか注目です。

(4月17日追記:積水ハウスの株主総会の開催場所が急遽ウェスティンホテル大阪から梅田スカイビルに変わったようです)。

なお、積水ハウス社の調査報告書全文(黒塗り箇所あり)は「SAVE SEKISUI HOUSE」というサイト(株主提案側の情報提供サイト)で読むことが出来ます。

(過去記事:積水ハウス地面師詐欺事件、驚きの社内調査報告書
(過去記事:積水ハウス地面師事件、見えはじめた失敗の本質






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