最高裁初判断か、路線価によらない相続課税訴訟上告審

路線価に基づかない相続税財産評価が適切かどうかが争われている訴訟に関し、最高裁第三小法廷が開く上告審弁論の期日が迫ってきました(3月15日)。最高裁で弁論が開かれるのはレアケースで、この場合高裁判決(国側勝訴)見直しがありえるとも言われており注目です。

そもそも相続税額は、指針とされる財産評価基本通達により計算を行い、土地は路線価をもとに評価されることとなっています。

土地毎に(目的に応じて)ある4つの価格(一物四価)の1つである路線価は、公示価格の90%、実勢価格の70~80%程(都市部ほど実勢価格との開差大)となります。

一物四価

ただし同通達には、土地の評価を路線価によらず課税庁の裁量により時価で課税できる規定(通達の総則6項)があり、本件訴訟は路線価での評価を否認し、総則6項に基づき行われた課税処分の適否が争点とされています。

6 この通達の定めにより難い場合の評価
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

富裕層の節税対策(の王道?)として、実勢価格と路線価の乖離を利用した高額(賃貸)不動産取引は極めて活発に行われていて、今回の司法の判断次第では相当な影響が出ることでしょう。

(賃貸不動産の相続税評価では、土地は「賃貸建付地」建物は「貸家評価」でさらなる軽減ができるようになっています)

◆本件訴訟の概要

被相続人(北海道在住)が94才で亡くなられ相続が開始、相続人は5名です。孫養子は、単純に基礎控除額が増える事と一代飛ばしの相続ができることとなります。

相続図

被相続人が(91才で!)取得した賃貸用マンション2棟の概要です。相続人が路線価により計算し申告した土地建物評価額は、被相続人による物件購入額の約24%にすぎないものとなっています。

マンション概要

この2物件につき路線価による財産評価が著しく不適当として国税当局が不動産鑑定評価を行い、それに基づき追徴課税処分(約3億円)が行われた訳です。

本事案の事実経過。当該賃貸マンション2棟を相続した孫(養子)は相続税の申告前に1棟を売却(相続後9ヶ月)しています(高額物件なので相続開始後かなり早い段階で売却活動が始まったのではないかと思う)が、この行為は税務当局の心証を最悪にしたでしょう。

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また、相続開始時の借入金債務が9.6億円と大きく、上記2棟の不動産以外にあった相当額の他財産までも相殺され、結果として「0円」申告をしたことも当局としては看過できなかったのでしょう。

借入残高

本件の傍若無人のように感じる節税策が適法となるとは到底思えませんが、路線価からいきなり鑑定評価ベースでの課税処分となって原告は納得できないのでしょう。

今回司法が、現在は曖昧な財産評価基本通達総則6項適用基準について、何らかの判断を示すことになると思いますがどういう結果になるのでしょうか。

10年以上前のことですが大阪地裁で偶々傍聴した、相続税法違反の(申告漏れで悪質性はなかった)裁判で、高齢女性の被告が若い検察官から厳しく(国民の義務を果たさない罪は重いと)指弾されているシーンが強く記憶に残っています。
その衝撃によって、それまで(世間と同じように)税逃れを軽く考えていた甘い認識を改めることができました。

やはり節税策を講じるにしても、納税に関し一定の市民感覚を失わないことは大切ではないかと思っています。






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