賃貸仲介の手数料返還訴訟で東急リバブル敗訴確定

賃貸の仲介業者東急リバブル(以下リバブル)に対し賃貸住宅の借主が、支払った仲介手数料の一部返還を求めた訴訟の上告審は、上告棄却となりリバブルの敗訴が確定しました(東京高裁)。

今回の訴訟は、賃貸仲介業者が仲介手数料として賃料1ヶ月分を受け取るために必要な借主からの(正当な)承諾があったかどうかが争われたものです。

業者側が借主から賃料1ヶ月分の手数料を受け取るには、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方について」において、借主の承諾を「媒介の依頼を受けるに当たって得ておくことが必要」」と記されています。

「媒介の依頼」の成立が何時なのかは、借主への契約締結日の連絡があった時点で(黙示の媒介契約として)成立すると東京地裁は認定しました(売買契約などで同様の判例があり、極めて妥当な認定です)。

リバブルの賃貸借契約当日(入居申込書)における承諾取得は、媒介の依頼後のものとして「承諾と言えない」とされた訳です。

事実経過の再確認(賃貸で媒介は馴染みがないので、媒介=仲介としています)

国土交通省の告示(ガイドライン)にかかわらず一ヶ月分手数料の承諾(書)を、実務に都合の良い賃貸借契約の当日に形式的に取得するという、業界の悪しき慣習(?)にレッドカードがだされた格好と言えるでしょう。

業者側でもグレーなやり方との認識はあったはずですが、少額な賃貸仲介手数料に関し、(コストに見合わない)訴訟を仕掛けてくる借主はいないだろうという油断があった分、今回の件は業界全体にインパクトがあると思います。

ただし実際の影響は少なく、承諾(申込)書を早い段階で取るようになるということだと思います(それはそれで借主にとっては良いことです)。




今回確定した判決のポイントを繰り返すと
(1)業者が賃貸仲介で「借主から1ヶ月分の手数料を領収するについては、媒介の依頼成立までに承諾(書)を得る必要がある」。

(2)媒介=仲介の依頼は、物件を内見して入居申込書に記入し、契約日を設定する段階で(黙示の媒介契約として)成立する
という点です。

売買と違い賃貸実務で借主との「媒介」(仲介と同義)は、意識されることはないのですが(媒介契約を義務付けされていないので)仲介手数料受領の根拠となる大事なものです。

賃貸借契約と同時(同日)に取得する従来のやり方での「承諾」は、訴訟になったら認められないので、今後は早めに入居申込書(兼仲介手数料支払書)を取得する動きになると思います。

賃貸契約では、種々トラブルはあっても訴訟に至ることは比較的少ないです。今回のように2012年頃からの古いエビデンスを揃え、宅建業法・告示を精査して、勝訴を読み切った(ように見える)うえで提訴した原告側は凄いと感心します。普通の人ではとても出来ないはずです。

一方リバブルは上告までしましたが、大手の会社が敗訴するとレビュテーションリスクが大きいと思います(不動産繁忙期に向けて、せっかくTV新CMを流しているのに)。

ただ、新聞などでは一斉に「賃貸仲介の手数料は0.5ヶ月分」と書かれていますが、借主の承諾があれば1月分で問題はないので少し違和感もあります。やはり「原則」0.5ヶ月分という言い方が正しいと思います。

それにしても借主も手数料が単に0.5ヶ月か1ヶ月かだけで業者や物件を判断するのは危険です。必ずトータルのコストをチェックすることがベターでしょう。

(過去記事:東急リバブルに賃貸仲介の手数料一部返還を命ずる判決
(過去記事:東急リバブルに仲介手数料一部返還請求訴訟の論点






カテゴリー: 不動産 パーマリンク