東急リバブルに仲介手数料一部返還請求訴訟の争点

朝日新聞が「1カ月分は取りすぎ 賃貸の仲介手数料、業者に返還命令」という見出しで、東急リバブルに仲介手数料の一部返還を命じた東京地裁判決を大きく取り上げ、8月の判決時には分からなかった双方の主張などを明らかにしています(11/13)。

訴訟は原則家賃0.5ヶ月分である仲介報酬に関し、上限の1ヶ月分を支払うことについて、「媒介の依頼」を受けるにあたって借主からの承諾を東急リバブルが得ていたかどうかが争われました。

「媒介の依頼」の時点が1カ月分の承諾と共に争点になっているのは、宅建業法の解釈に関する国のガイドラインで「1カ月分の手数料を受取る場合には、媒介依頼までに依頼者の承諾が必要」とされているからです。

判決ではこの「媒介依頼」が、借主と東急リバブル間で(下記時系列表)1月10日に(黙示の媒介契約として)成立したとものと認定されました。賃貸借契約の成約に向け活動中であっても、契約目前の段階に至っており媒介意思の合致が認められるということでしょう。

東急リバブルは、地裁認定の上記媒介成立日までに借主から「承諾」を得ていないため、仲介報酬として受け取れるのは原則である家賃0.5ヶ月分だけとなり、それを超える部分については不当利得として返還を命じられたということだと思います。

経過表

東急リバブル側は、媒介依頼の成立日を賃貸借契約締結日であると主張しました。しかし媒介は、取引経過の中でも成立するもので、営業努力などが尽くされた段階(契約日の設定)で媒介意思の合致をみたという地裁の認定は合理的なものです。

売買仲介においても、買付証明書を出した段階で媒介契約が成立するなどの判例もあり、賃貸借契約締結日に媒介成立という主張には無理がありそうです。

賃貸借契約の仲介報酬額は次のようになっています(国土交通大臣告示)

なお、本件賃貸仲介取引は次のような形態だったのではと推測します。東急リバブル側は客付け業者の位置にいたと思われます。

取引図




◆仲介手数料は0.5ヶ月分が原則

借主の(1カ月分支払いの)承諾に関して、賃貸業務ではほとんど意識しない「媒介依頼」の時点が問題となるのは、上記したように国の包括的なガイドライン「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方について」に明記されているからです。(抜粋)

「この依頼者の承諾は、宅地建物取引業者が媒介の依頼を受けるに当
たって得ておくことが必要
であり依頼後に承諾を得ても後段に規定す
る承諾とはいえず」

要するに賃貸の仲介報酬を例外的に(!)1カ月分受取る場合には、媒介依頼=媒介契約までに依頼者の承諾が必要で、今回の東急リバブルのように媒介成立後に得た承諾は、事後的なものとして承諾とは認められないということです。

今回の地裁判決が、賃貸仲介現場にそれほど影響をもたらすことはないのですが、0.5カ月分が原則ということを再認識させたということでは大きな意味をもっています。

上告審の結果は予測し難いものの、地裁判決が覆る可能性は限りなく小さいのではないでしょうか。

売買仲介においても、買主との媒介契約は殆どが契約締結日に行われているはずです。しかし、「抜き」行為などのトラブルの際には賃貸同様、黙示での成立日が重要になるでしょう。
また重要事項説明も業法の拡大解釈で(?)契約直前にされていますが、物件や相手によっては早めの説明がベターと思われます。

(関連記事:東急リバブルに賃貸仲介手数料一部返還を命ずる判決






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