東急リバブルに賃貸仲介手数料一部返還を命ずる判決

賃貸住宅の借主が、賃貸の仲介業者東急リバブル(以下リバブル)に対し仲介手数料の一部返還を求めた訴訟で、その請求を認める判決が出ました。
脱法的行為が横行し、不動産大手が手を出さない賃貸住宅仲介をガチガチの業法順守スタイルで行っている(と思う)リバブルが敗訴とは皮肉です。

訴訟の概要(毎日新聞)。
「賃貸住宅を借りた際に、家賃1カ月分の仲介手数料を支払った借り主の男性が「原則は賃料0.5カ月分だ」として、手数料の一部返還を求めた訴訟で、東京地裁(大嶋洋志裁判長)は「業者が男性から承諾を得ていなかった」として男性の請求を認めた。

賃貸仲介(居住用建物)に係る仲介手数料は以下のように定められています。依頼者の承諾があれば、賃料1ヶ月分を受け取ることができますが、双方合わせて賃料1ヶ月分が上限。
告示内容

本件訴訟では、依頼者からの「賃料1ヶ月分についての承諾」をどのように(どの時点までに)得るべきかが争われたものと考えます。つまり、リバブルの主張した(と思われる)借主からの承諾(恐らく、賃貸契約締結直前に取得したもので十分な説明が尽くされていなかった?)は、事後的なもので正当な承諾にはあたらない、と判断されたのではないかと推測しています。

毎日新聞の報道内容から本件賃貸借契約(2013年締結)の流れを整理すると
1月8日頃 借主が物件を借りたいとリバブルに連絡
1月10日 担当者が契約日について連絡⇒仲介契約成立(この時点で要承諾)
1月20日 賃貸借契約締結⇒(リバブルはこの時点で承諾取得?)
1月22日 手数料支払い
という経過です。

男性側は訴訟で、同社から契約前に「原則0.5カ月分」の説明を受けてお
らず1カ月分を支払う承諾をしていなかったと主張していた。

大嶋裁判長は判決で、業者が家賃1カ月分の手数料を請求する場合は、物
件の仲介をする前に承諾を得る必要があると指摘した。その上で、同社
と男性との間で仲介が成立したのは、担当者が男性に契約締結日を連絡
た10日だったと認定。この段階で同社は男性から1カ月分の手数料を受け
取る承諾を得ていなかったとし、消費税分も含めた0.5カ月分の
11万8125円を男性に返還するよう同社に命じた。(毎日新聞)

このニュースに関し、借主の承諾なしに賃料1ヶ月分を領収していたとの誤解が目立ちますが、承諾の形式は備えています(手数料の支払約定書をとらない業者はいない)。

要するに今回の判決の肝は、(1)依頼者と仲介業者との仲介(媒介)契約は、入居審査なども終わって契約日の設定を行う時点で(諾成契約として)成立する。(2)仲介業者は賃料1ヶ月分の承諾を、当該仲介(媒介)契約成立までに得る必要がある。との2点です。多くの業者は賃貸借契約締結直前で承諾を得ているはずなので、実務的には日程的にキツイものの、依頼者にきちんと説明し納得してもらうためには妥当な判断と思います。
一般的な業務フロー図

訴訟の詳細が分からないので私見ですが、承諾手続きが「事後的で承諾にあたらない」と原告側が主張していたなら、相手のウィークポイントをついた作戦勝ちです。原告側弁護士にとっては、訴額が小さく着手金や報奨金が少なくとも大手企業相手に勝訴したというのは大きいでしょう。

今後実務では、入居申込書兼仲介手数料支払い承諾書のようなものが出来るかもしれません。

ちなみに、リバブルが控訴するのかどうかわかりませんが、仮に控訴審で勝訴しても(可能性は低いと思う)メディアはとりあげてくれない(大手が勝訴してもニュースバリューがない)ので、名誉挽回のチャンスがなく悩ましいところです。

◆賃貸仲介手数料は安ければ良いのか

今回のニュースで、賃貸仲介の手数料が注目されていますが、一般的な賃貸仲介における仲介報酬は下図のようになります。
仲介報酬

住宅賃貸仲介で、仲介手数料の上限が賃料1ヶ月分では経営がなりたたないので、広告費という名目で手数料(業法違反)を得ているのが実態です。

賃料0.5ヶ月分やゼロを謳う業者は、貸主側から広告費名目で報酬を得ています。空き室に悩むオーナー側は数ヶ月分(あるいは定額で10万円ほどとか)という多額の広告費名目の手数料を支払ってでも契約して欲しいのです。
更に担当者への個人キックバックが横行しているのも常識で、コンプライアンスやモラルに問題の多い業界のように感じます。

競争力のない(決めにくい)物件ほどそういった不明朗なお金が流れいて、業者は優先的にそういった物件を紹介します。依頼者は仲介手数料の安さだけでなくトータルのコストなども考えることが大事だと思います。

そろそろ、広告費や礼金、更新料などは見直しすべき時期に来ているようです。






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