積水ハウス地面師詐欺事件の調査概要公表についてーその2

ここ2~3年ほど、北区や中央区、福島区などで積水ハウスの分譲マンション「グランドメゾン」シリーズの何件かを用地取得の段階から見る機会がありました。それらどの物件も用地選定や商品企画が適切で、外構デザインも洗練され野村不動産の「プラウド」に匹敵するマンションブランドだと感じていたものです。
しかし今回の土地詐欺事件や、事件に関連した社内人事騒動で会社のイメージダウンは避けられません。大切なブランド価値回復にむけ全力を挙げてほしいものです。

以下は今回の事件に関する疑問と私見です。

◇なりすまし所有者を本人確認書類だけで何故信用したのか

積水ハウス社の「分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告」では、「A氏のパスポートや公正証書等による書面での本人確認を過度に信頼し切って、調査が不十分な状況で契約を進めてしまいました。」とあります。A氏とはなりすましの所有者です。

不動産売買に際し、売主が用意すべき主な書類は

権利証
②実印&印鑑証明書
プラス本人身分証明書(原則顔写真付き) です。

今回、所有者になりすました地面師側の手口詳細は定かではありませんが、売主としての必要書類のうち身分証明書としてのパスポートを偽造しています。推測ですが、その偽造パスポートで実印を改印し、印鑑証明書を取得した可能性がありようです。持っていない権利証は、次の3つの代替手段があります。

権利証の代替手段

今回の詐欺事件で、所持しない権利証の代わりに用いられたのは、公証人による本人認証だったようです。当然積水ハウス専属の司法書士が行う「本人確認情報の提供」によるものと思っていたのですが。恐らく地面師側の求めに応じて、司法書士の「本人確認情報の提供」ほど厳密さはないと言われる公証人の認証になったのでしょう。積水ハウス側としては取引金額や取引形態に加え、そのような本人確認方式などから、最大限の注意義務で慎重な側面調査なども実施すべきだったと思います。

地面師側が手練れていたとはいえ、不自然なほど彼らのペースに嵌まってしまっているのは、恐らく「言う通りしないなら他の買い手に売る」というようなプレッシャーをかけられたからでしょう。どうしてもその土地を買いたい積水ハウスの担当者側が焦らされ、冷静な判断が出来ない状況だったと思われます(不動産で同じものはありません。架空の購入希望者の存在をチラつかせて契約を急がすのは、売買詐欺師達の常套手段です)。

◇管理部門は事業部をチェックできる体制だったか。積水ハウスの組織風土

上記「ご報告」によると
「売買契約締結後、本件不動産の取引に関する複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届きました。しかし、本社のリスク管理部門は、マンション事業本部の判断に追従する形で、これらのリスク情報を取引妨害の類と判断し、十分な情報共有も行われませんでした。」「法務部は、本来持つべき牽制機能を果たしていません。」と記されています。

しかし法務部のような内部統制部門が強いリーダーシップを発揮できるかというと疑問です。現実には会社の訴訟案件や顧問弁護士事務所との窓口的な立場にある事が多いのではないかと想像します。まして積水ハウスは前会長も現会長も営業出身という組織で権限移譲も進んでおり、機動的でスピーディな業務執行を旨とする会社のはずなのです。
ちなみに同社の「コーポレートガバナンス基本方針」によると、「100億円未満の分譲用土地・賃貸事業用不動産の取得、借入」 などの業務執行に関する意思決定は、取締役・執行役員に委任されています。

ほとんどの企業では法務部は、基本的には受け身の部署だと思います。例え外部からリスク情報が届いてアドバイスはしても、進行中案件を事業部の意思に反してストップさせるようなことは非常に難しかったと思います。
調査概要では法務部長(兼務)と管轄部門の不動産部長は共に既に解職されていますが、近く執行役員も退任ということです。

◇株主からの訴訟提起の請求

3月6日の積水ハウス社のニュースリリース「株主からの提訴請求について」では、同社株主から監査役宛てに、阿部前社長(現会長)の責任を追求する提訴請求がありました。会社が60日の間に提訴しない場合は、株主代表訴訟ということになるのでしょう。

(過去記事:積水ハウス土地詐欺事件の調査概要公表ー拙劣な取引と対応

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