不動産営業職と働き方改革

野村不動産が裁量労働制の運用について是正勧告を受けるというニュースが昨年末にありました。2017年のキーワードの一つ「働き方改革」に関し、裁量労働制の規制緩和も議論されるなかでの出来事です。働き方改革は長時間労働の是正を課題としますが、残業抑制という面があります。

裁量労働制(企画業務型)は事前に想定した労働時間(残業含む)だけ働いたとみなし賃金を支払う仕組みで本来経営の中枢にいる社員に適用する制度ですが、報道では営業担当社員にも適用していたということです。

新築マンション販売担当者は、高額商品を扱うので顧客との密度の高いコミュニケーションが欠かせません。メールや電話だけでは信頼関係の醸成が難しいのです。なおかつ、AIでは代替できない(マニュアル化できない)暗黙知的な繊細な対人関係スキルが要求される職種です。そのため顧客対応でどうしても夜遅くまで仕事をすることになるので、残業のルール化や管理がとりわけ難しい職種だと思います。

今回の件は、全社的な残業抑制という流れの中で、社内のパワーバランス的に弱い営業部門も裁量労働制を受け入れざる得なかったということかもしれません(勿論労使の合意が前提ですが、なかなか個人がNOとは言えないでしょう)。
野村不動産は住宅部門に強味をもつ企業なので少し違うような気がしますが、他の大手不動産デベロッパーは開発や企画部門が主流派で営業は傍系という感じは否めません。社内力学的には営業部門は弱い立場なのです。

しかしマンション販売に関しては「プラウド」ブランドのマンションの企画や戦略など、財閥系デベロッパーより遥かに優秀な野村不動産だけにこのニュースは残念に思います(労使で取り決めた裁量労働制という、本来外部にはわからないような事案ですので、内部告発的なものがあったのでしょうか)。

図は昨年秋の臨時国会に提出予定だった、関連法案のなかの残業上限規制の具体案です。

残業上限

長時間労働と言えば、トラックのドライバーと共に不動産販売・仲介職もその代名詞となっていると言えるでしょう。
そんななか、不動産仲介大手会社は住友不動産販売も東急リバブルも親会社の完全子会社として上場廃止になりましたが、三井のリハウス含め揃って高収益の優良会社です。しかしこういった不動産販売会社は長時間労働体質型のアナログ的要素の強い企業という面があり、働き方改革の流れに沿って、本社管理部門が一方的に現場に残業抑制を要請してもなかなかスムースに行かないような気がします。

ややバブル気味で年が明けた2018年は、不動産事業の外部環境には当面何の問題もない状況ですが大手不動産販売会社は、働き方改革の運用次第では、業績に思わぬ影響が出ることもありそうな気がします。

昨年は三菱マテリアルや東レの子会社にも広がった品質管理不正が大きな問題となり、グループ内のガバナンス欠如が指摘されました。製造業以外でも企業グループ内に、高収益で優良な長時間労働体質型企業を抱える場合は少し注意がいりそうです。

残業の上限規制案






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