積水ハウス、地面師が権利証提出拒否も代金支払い

積水ハウス55億円詐欺事件で、「代金支払いの前日、所有者役(のなりすまし犯)に土地権利証の提示を求めた際、内縁の夫とけんかを口実に権利証の提示を断わられていた。にも拘わらず翌日、積水ハウスは権利証を確認しないまま残代金全額を支払っていた」(11/5読売新聞)という報道には笑ってしまいました。

残代金支払い時に売主が権利証を提出できなければ(登記申請できないため)その決済は中止(延期)し残金の支払いをストップするのが当たり前です。今回は、公証人の本人確認(権利証がない場合の代替書類)が用意されていたとはいえ、地面師のこんな陳腐な嘘を信じ(?)権利証の確認なしで残代金を支払うという積水ハウス側の判断は普通では考えられないことです。

下記事実経過でみても、スピード感のある土地購入意思決定がされている反面、有名物件(売りに出ない)でもある高額な本件土地を普通のマンション用地取得レベルで対応してしまっています。大事な「所有者の本人確認」や書類のチェックは形式的で、十分な注意が払われていなかったようです。

時系列表

恐らく、代金支払い前に地面師側から「内縁の夫がもつ権利証をどうしても提出せよと言うなら、この取引は解約する。もっと高く買いたい業者が控えている」というような不動産詐欺師がよく使うブラフをかけられパニックになったのかもしれません(地面師側からすれば、殆ど元手なしで既に14億円もの大金をせしめているので、万一解約になっても全然オッケーだったはず)。何としても取引を成立させたいと焦る積水ハウス側は、既に地面師グループに完全にマインドコントロールされています。

それにしても地面師グループで所有者の財務担当役、カミンスカス(小山)操容疑者や、所有者役のおばさん(保険外交員)、内縁の夫役など見るからに胡散臭い雰囲気の詐欺師達を、巨額不動産取引の相手方として不審に思わない感覚がどうにも信じられません。詐欺案件を持ち込んだ不動産業者総てから怪しまれ、失敗が続く地面師達のこんな見え透いた田舎芝居に引っ掛かかるのは、積水ハウス以外ないはずです。

◆偽造権利証の精度は低かった?

この地面師詐欺事件の本質は、「本人確認の難しさ」につきます。なので真の所有者しか持ちえない権利証(登記済証。その所持者が登記名義人本人であることを証明する書類。いわば本人確認書類)を地面師達が偽造したのかどうかに大きな関心を持っていました。報道が錯綜していてまだはっきりしませんが、偽造権利証は作られていたようです。

権利証は、登記申請書副本に「登記済」印が押印されたものですが、ある業者は、地面師から見せられた権利証のカラーコピーを法務局でチェックしてもらい、本物ではないと見破ったようです。一方、積水ハウスは、「売買契約(2017年4月24日)による手付金支払い前、司法書士が土地権利証を確認したが、古く見える紙で法務局の押印もあったため本物だと信じた」(読売新聞)ということです。
権利証の偽造は現物(本物の権利証)がないと精巧に偽造することは他の書類より難しいと思います(年代によって登記済印の形状が変わる?)。地面師側も、偽造権利証の精度は高くないので所有権移転登記申請などに使われるのは危険との判断があったと思います。

ただ今回の詐欺事件計画では、地面師達の当初の第一目標は手付金を詐取することにあったのではないかと予想しています。手付金だけで10数億円になるのですから。
ところが、詐欺不成功続きの中、仲介役生田容疑者の知人が東京マンション事業部幹部として在籍する積水ハウスだけが全く無警戒に取引に乗ってきたので、一気に代金の大部分にあたる約55億円詐取まで行うに至ったように感じます(妄想)。

しかし、真の所有者側から「売買契約はしていない」との内容証明や、身内である子会社社長からの、取引業者への疑義などを無視して残代金支払いに向け暴走した背景や積水ハウス側実務者の不動産取引習熟度など、まだがよくわからない部分も多いです。
いずれにしても、今回の大型詐欺事件で明らかになったのは、社内人事抗争が続いていたり、忖度する文化や官僚化が蔓延している企業では、明らかに間違っていることでも制御装置が働かず「コーポレートガバナンス」が全く機能しなくなる危険性があるということです。





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南森町の千趣会、本社ビルを売却

南森町同心1丁目に本社があるカタログ通販大手の千趣会は、2年連続の大幅赤字が予想されることで、本社ビル売却を含む大規模なリストラを行うと発表しました。主力事業の女性向け通販「ベルメゾン」の不振が要因です。

「ニッセン」もそうですが、衣服系紙媒体通販はよほどカテゴリーを絞って差別化しないと、アマゾンやZOZOTOWNのようなネット通販大手に対抗できないのでしょう。

改めて千趣会のセグメント別売上高を見ると、通販事業中心のほぼ一本足打法に近いビジネスモデルとなっています。ただ、規模は小さいものの婚礼事業老舗「ワタベウェディング」と業務提携して推進するブライダル事業が手堅く収益貢献しています。

下の図は千趣会の2018年度第2四半期決算説明会資料にある各セグメント別売上高グラフです。

事業セグメント

千趣会としては成長分野となる、そのブライダル事業の提携先・出資先(筆頭株主として大きな株主シェア有)の「ワタベウェディング」でMBOが検討されているのは懸念材料です。「ワタベウェディング」との業務提携解消は、業績再建を目指す千趣会としては痛手のため、千趣会が反対するなかそのMBOが実行されるのか今後の動きが注目です。

千趣会は同心1丁目周辺にオフィスが点在していているので、本社で打合せを終えたと思われるノートパソコンを携えた千趣会関係の社員(女性多い)を以前よく見かけたものでした。
センスもイメージも良くステータスも高い東証一部上場企業千趣会の存在は、南森町にとっても非常に大きいと思います。今回の事業再構築では本社が同じ同心1丁目内に移転するだけですが、何とか業績をV字回復軌道に乗せ、復活を遂げてもらいたいものです。

◆千趣会本社ビルは売却

千趣会本社はすぐ近くの千趣会ビジネスセンターに移転後、現在の本社ビルは売却されます。本社ビルは2008年竣工で、南森町では比較的大きな規模の敷地面積(ラフな計算で350~360坪程度?)があり、間口が広く洗練された雰囲気の建物です。

本社地図

本社ビル、ソフトな感じで街に溶け込んでいます。
千趣会本社ビル

千趣会本社の千趣会事務センターを挟んだ隣では、関電不動産開発(合併した旧MID都市開発は南森町での開発物件多い)が総戸数42戸のやや小規模な「シエリア大阪同心」を販売中ですが、完売目前です。

関電不動産開発は、南森町で大阪天満宮の南側でもやはりの来年2月着工のマンション計画があります。場所は、元相生楼跡にできた新しい賃貸マンションの南側でここも良い立地です。

[11月3日追記]
最初はマンション適地が売却に出るのかと思いましたが、まだビル竣工から10年ほどと新しい建物なのでオフィスビルとして売却されるのでしょうか。

(過去記事:南森町同心1丁目に関電不動産開発のマンション用地





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積水ハウス地面師事件、見えはじめた失敗の本質

積水ハウスが約55億円を地面師に騙し取られた、東京五反田の土地詐欺事件が急展開し、地面師グループ8名が逮捕されました。事件の細部が報道されだし、地面師の手口が少しづつ判明するようになってきた今、最も慌てているのが積水ハウスかもしれません。トップ企業としての驕りが有ったのか、不動産会社としては考えられないほどの拙劣さや無警戒さが明らかになってきているからです。

他の不動産会社(複数の)は、地面師たちの持ち込んだ土地(売りに出ないことで有名な物件)売込みに対し警戒度MAXにし、動画や写真を撮ったり、法務局に書類の見立てを依頼したり、なりすまし犯の些細な言動や服装(の質素さ?)などまで細心にチェックした上で、怪しいと見破り取引を止めました。

一方、積水ハウスは「公証人による本人確認」を絶対視してしまい、司法書士が行った面談で、なりすまし犯が本人なら間違えるはずがない干支を間違って答えてもスルーしていたようです。東京の地面師事情に疎すぎたにしても、高額取引に対する驚くべき危機意識・問題意識の欠落です。

売主が移転登記に必要な権利証をなくした場合その代替として、司法書士が極めて厳格にチェックを行ったうえで「本人確認情報」を作成するのが普通です。例外的に使われる公証人による本人認証は、簡便で司法書士のそれより甘いと言われます。不動産取引の修羅場を何度もくぐってきているプロなら、公証人による本人認証が使われることに素朴な疑問を持つでしょう。

◇社長案件

真の所有者からの警告を他業者の「取引妨害」として、残代金決済を当初予定より2か月早めるなどしたのは、本人認証の公正証書は正しいという固定観念と共に何としてもこの取引をまとめたいという焦りを感じます。報道にあるように、この案件が社長案件だったということもやはり影響していそうです。

大企業(でなくとも)で上司に忖度するのは普通です。しかも希少なマンション用地が安く取得でき、かつ自社分譲マンション7億5千万円分を代金の一部で購入してもらえるという案件です。成立に向け加速するこんな大型商談に疑義を呈し、ブレーキをかけるのはまず不可能です。

いずれにしろ、当時の社長の責任を厳しく指摘していた、積水ハウス社外役員らでつくる調査対策委員会による調査報告書の全容が知りたいところです(概要のみ公表済)。

あまり取り上げられていませんが、犯行グループによる7億5千万円分の積水分譲のマンション購入というのは、積水ハウス東京マンション事業部にとって非常に魅力的な話だったのではないかと想像します。売れ残った高級マンションの最後の部分は、利益の塊でメリットは極めて大きいからです。地面師たちが購入を持ち掛けたのなら、在庫処分に悩むマンションデベロッパーの弱みをつく、巧妙な手だと思います。

今回の事件での売買契約の形を整理すると、一旦、地面師グループのIKUTA社が同じ地面師グループの偽所有者から60億円で当該物件の買取契約をし、それを積水ハウスに70億円で転売(他人物売買)するという形式です。

契約は2段階に分かれます。
 ①偽所有者(地面師)⇒IKUTA HOLDINGS(買主:地面師):60億円
 ②IKUTA HOLDINGS(売主)⇒積水ハウス(買主):70億円

②の契約の内訳   
・売買価格:70億円
・手付金:14億円
・残代金:41億5千万円
  被害額は上記計55億5千万円


 
残代金支払いと同時履行された、所有権移転登記申請が法務局で却下されたため、 売買代金のうち支払い留保などで、下記計14億5千万円が被害を免れました。
所有権移転登記完了時までの留保金:7億円(売買価格の10%)
・犯行グループ購入予定のマンション代金相殺分:7億5千万円

中間で買取業者として介在したIKUTA社の転売益は10億円で、そのうちかなりの部分は同社の運転資金に費消されたようです。いずれにしろ相手は逮捕されることも前提にしたプロ詐欺師(?)グループなので、今回被害にあった資金は既に秘匿されその回収は無理と思われます。

固定観念をもったり、契約ありきでしか物事を見なくなれば、正しい情報でも妨害情報とみなすような大きな誤りを犯す危険性があることを痛感する事件でした。

[10月22日追記]
産経新聞ニュースによると、この事件の仲介役IKUTA社の生田容疑者と積水ハウスの担当社員とは数年前から面識があったそうです。売込みに失敗続きの地面師達がそれに目をつけ、生田容疑者をグループに引き込んだということです。
積水側と面識の男、仲介役に 地面師事件

仲介役生田容疑者と面識があったことで積水ハウス側が警戒心を弱めてしまったようです。ただ、生田容疑者のIKUTA社を、ダミー会社的な形(元手は全部積水ハウス)で取引に関与させたとしても、積水ハウスは所有者の本人確認に最大限の注意義務を払って、この取引の安全を期するべきであったことに変わりはありません。

(過去記事:積水ハウス地面師詐欺事件にみる土地取引のリスク





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